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研究

弱者を追い込んでしまう社会をどうすればいいのか

日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科
人間社会学部長
小山聡子教授

研究分野

社会福祉

人と社会を繋ぐ人材を養成する

人間社会学部は、一般的に耳にする法学部や経済学部などと異なり、その特色が分かりづらいかもしれません。もっともそれは無理もなく、この名称を名乗ったのは本学が初であり、1990年のこと。現代社会学科、社会福祉学科、教育学科、心理学科、文化学科の5学科を統合した比較的新しい学部です。

人間と社会の関わり、それがもたらす相互作用について広く研究する学部があり、その目的のひとつとして、教員やソーシャルワーカー、セラピストといったヒューマンサービスに関わる人材養成が挙げられます。

私の現在の研究内容は主にふたつあり、ソーシャルワーク、つまり対人援助の理論と方法及びその教育方法を検討するというのがまずひとつ。そしてもうひとつが、障害児者の福祉や、虐待問題についてです。ひとつめがやや漠然としているかもしれませんね。実はソーシャルワーク教育にはロールプレイと言って、演劇やドラマの手法が取り入れられています。実際の援助場面を想定し、架空のシーンを演じることで実際の現場で起きることをリアルに感じ、かつ分析し、向き合う手法で、こうした方法の持つ深い意味や、より効果的な導入のあり方に関する研究を継続して行っています。

勉強をずっと続けるために

特段のきっかけがあったわけではありませんが、もともと社会問題や社会科学領域のことに興味があり、高校生の頃からそうでした。大学に入るとそれらをさらに集中的に学べるでしょう? その中で物事の考え方や社会における自分自身の位置づけを知ることができたのは大きかったですね。それをサポートしてくれる素晴らしい先生方にも出会いました。

なにかを知り、それについて考え仲間と議論する、その成果を論文や発表で表現し、そこにまた新しい課題が生まれる。そういうステップが本当に楽しく、大学3年生の時のゼミ教員だった恩師小島蓉子教授(故人)に「勉強をずっと続けていくにはどうしたらいいのでしょう?」と相談したことが、現職の直接的なきっかけです。

その時、教授は「研究者になりたいのなら、机の前だけにいてはいけない。まずは社会福祉領域の現場実践に出ること」というアドバイスをくださり、加えて北米留学を勧められました。後に聞けば、教授は障害福祉に関する教科書もなかった時代に北米でそれを学んだとのこと。それでその分野における日本のキーパーソンのひとりになられたわけですが、私にその道を指し示してくださいました。

結果的に恩師とは少し異なる分野ではありましたが、本学を卒業後に肢体不自由児施設で指導員を務め、ミシガン州立大学の大学院に留学。帰国してからはソーシャルワーカーとして支援実践を積み、結婚や出産、本学の大学院博士課程後期を経て今に至る、というのがこれまでの流れです。勉強を続けたいという希望を叶えるため、その時々に与えられた活動をこなしていくことで今につながったと言えます。

問題の多様な捉え方

おそらく、多くの学生は入学した時点で勉強や研究の意義、方向性に対して定まってはいないでしょう。でも対象はなんでもかまわないので何かを見いだし、そのテーマに対してあきらめず、自分なりに追求する持久力を身につけてもらいたいですね。

その中で大切なのは、問いの立て方を学ぶこと。たとえば、「弱者のために何をしてあげればいいのか」ではなく、「特定の人を弱者に追い込んでしまう社会をどうすればいいのか」。そういう視点を持つことです。研究を続けていると、それを通して得られた思考や感覚がひょんなところで日常生活を読み解くことにつながったり、異なる角度で物事を見られたりすることがあるものです。懸命に掘り進んでいると、思ってもみなかったところに出口となる穴が開いたり、突然すべてがクリアになったり。研究にはそういう醍醐味があり、ワクワクする瞬間が必ずやってきます。どの学部であれ、そうやって道を切り開くプロセスを学んで頂きたいですね。

プロフィール

小山聡子(おやま さとこ)教授
人間社会学部長。日本女子大学文学部社会福祉学科卒。肢体不自由児施設に2年強勤務した後、ミシガン州立大学教育学部大学院リハビリテーションカウンセリング学科を修了。障害者更生施設でのソーシャルワーカーとして勤務する傍ら、日本女子大学文学部社会福祉学専攻博士課程後期に通い、満期退学の後、1996年から本学に着任。主な著書に『援助論教育と物語 対人援助の「仕方」から「され方」へ』、『LGBTと女子大学 誰もが自分らしく輝ける大学を目指して』などがある。

研究キーワード

ソーシャルワーク理論、社会福祉援助方法論、ソーシャルワーク教育、障害学

主な論文

ソーシャルワークの職務と専門性に関する一考察
ソーシャルワーク専門分化におけるリハビリテーションソーシャルワーク
システマティックカウンセリング ーモデルとしての特長と制限ー

学術研究データベース